法学クラスタ向け・就職活動のマナー
まとめがありそうでなさそうなのでまとめてみました。
あまりにも当たり前のことは省いてありますが,法学クラスタの就活生は,一般の大学生より就活経験・知識に乏しいと思うので,役に立てばいいなあと思います。
なお,基本的に法律事務所に対する就活を想定して書いています。インハウスは通常の就活サイト・就活本で十分だと思いますが,特殊そうなことは書いておきます。
【履歴書】
・写真は記入要領に書いていなくても必ずつける。
・ネットでは西暦の書式もあるが,和暦で書くのが無難。
→こだわる人は本当にこだわる。逆に,採用側から西暦の記載例等を提示している場合,絶対に和暦で書いてはならない。
・履歴書をメール添付で送付するときは必ずPDFで。
→法曹業界は一太郎ユーザが多く,Wordはレイアウトが崩れがち。
・書式自由の場合,A4かA3で1枚にまとめるのが無難。
→面接官は履歴書を印刷して面接に臨むので,複数枚は見づらい。
・書式自由の場合,フルカラーで作るかモノクロで作るかは自由。ただし写真は必ずカラーで。
→wordのテンプレート(落ち着いた青色などのもの)を使うのもあり。
【メール】
・つながる電話番号を必ず書いておく。
→就職活動が始まる前に,電話番号・メアド入りの署名を設定しておくのがよい。
・就職活動に関係するメールは,ネット上の就活サイト等から例文を探してから書く。
→オリジナリティを出すと思わぬところで失敗しやすい。敬語とか。
・こまめにお礼のメールをするのが無難。
→事務所訪問,面接等のお礼はメールで十分。原則お礼状を出す必要はない。ただし,訪問時に傍聴に同行させてもらった場合など(普通ここまでしないが…),インターンに近いことをした場合は限界事例。お礼状が必要だと信じている人もいるので,メールでとりあえず当日お礼申し上げたうえで翌日お礼状を送るのが無難。
【事務所訪問/面接】
・事務所訪問,面接は基本的にスーツで行く。何も言われなかったり平服で~とか言われても念のためスーツで行く。
→リクルート担当の弁護士が平服を許容してもボスや他の弁護士がそれを許容するとは限らない。そもそも担当の平服OKという指示をボスが知らない可能性もある。結局,私服で行くメリットは皆無に等しく,スーツで行くのが最もリスクが低い。
・スーツは別にリクルートスーツである必要はない。
→明るい色でなければ問題なし。ストライプ入りやグレースーツでも法律事務所の就活においては特に不利には働かないと思う。ただし,法テラスやインハウス等はリクルートスーツで行くのが無難。
・面接のマナーは1冊本を買って勉強しておくとよい。
→弁護士はマナーが大好き。ネットの就活サイトは情報が断片的になりがちなので1冊は「通読」しておくのがよい。
【食事】
・飲めない人も乾杯はビールを頼んでおいて口だけつけるふり→即烏龍茶オーダーが無難。
→くだらないことだが,最初にビールで乾杯できないことをマイナス評価する人種は一定数存在する。
・ビールの乾杯は相手より下からコップを当てる。
→ギリギリまで相手と同じ高さでコップを近づけていき,インパクトの瞬間にコップをやや下に移動させ,相手より下から当てる方法がよく使われている。焦らないように。
・食べにくいもの(魚など)の綺麗な食べ方を動画などを見ながら練習しておくとよい。
→弁護士は育ちのいい人が好きな傾向にある。育ちのよさは食事に現れるので,選考の過程では弁護士と一緒に食事する機会が多い。焼き魚は頻出問題である。
→どうしても綺麗に食べられない料理がある場合,「何が食べたいですか」と聞かれた際に,必ずその料理が出てこなさそうなジャンルの店を希望する手もある。魚介類系は難しいものが多いので本当に上手な人以外は避けるのが無難だろう。
【電話】
・急にかかってくるので,就活を始めて以降は知らない番号はすべて弁護士からの電話だと思ってとると無難。
→「はい○○(自分の氏)です」で電話をとるクセをつけておくと安全。
→また,一度かかってきた電話番号はこまめに登録しておくと次回から心の準備をして電話をとれる。
【サマクラ/インターン/エクスターン】
・名刺&名刺入れは持っておくのが安全。
→原則として,目下の者から名刺交換を始めること,名刺を切らしていることは良くないこと,というルール(?)がある。就活生にこのルールを原則通り適用すべきかどうかは意見が分かれるところである。別に名刺なんて弁護士登録してからでいいよ的な物言いをする人から,名刺持ってない=就活の意識が低いと決めつける人まで,色々な人がいるので,就活を始める前につくっておくのが安全。学生は大学生協で大学ロゴ入りのものをつくるのが無難。
・名刺交換のルールはネットで勉強必須。
→通常の就活と異なり面接の開始時など微妙なタイミングで名刺を渡してくることが多いので,もらった名刺をどう扱うかを含めて要予習。
・複数日にわたる場合は最終日の翌日までにお礼状を出すのが無難。
→名刺をもらっておくとメアドや住所がわかるのでお礼状を出す際にスムーズ。小規模事務所だとネットに住所等の情報がないこともある。
→サマクラを大量に受け入れているような大規模事務所だと,お礼状を出さないデメリットはあまりないかもしれない。しかし,出すと好印象を与えられるので,原則出すのがよい。
→原則終了日の翌日までに出すべきだが,終了日から1週間以内までなら(多少マイナス評価になるリスクはあるが),許容範囲。それ以上遅れて出すのは逆にヤバい。
司法修習に役立つ本・刑事系(軽く予習しておきたい人から裁判官志望者まで)
司法修習に役立つ本・民事系(軽く予習しておきたい人から裁判官志望者まで) - おいでよ ほうりつがくのもり(基本書レビューblog)
の続きです。民事系(民事裁判・民事弁護)が読みたい人はこちらをどうぞ。
刑事裁判
【手続】
刑事訴訟法(酒巻匡)
時間があるうちに基本書や講義案を読みなおしておきましょう。
手続法は全体がわからないと個別の論点もわからないので…。
酒巻刑訴は引用があまり充実してないですが,結論を言い切ってくれるのでなんだかんだいって実務修習では使える体系書です。
季刊刑事弁護 no.78(summer 2014―特集:裁判員裁判を活かす公判前整理手続)
あと別に何を読んでもよいのですが,公判前整理手続関連はよく起案や課題で問われるので文献を読んでおくといいでしょう。判例タイムズに大阪の刑事実務研究会が書いてる連載もおすすめです。
課題や模擬裁判対策に,手頃なサイズのコンメンタールを1冊持っておくといいと思います。
【事実認定】
裁判官志望者以外はこれ1冊で十分です。非常によくまとまった本です。
裁判官志望者がバイブルにしている本です。起案や課題の元ネタ集的なポジション。
完全に裁判官志望者向けですが,難しくはないです。
ちなみに量刑起案に関する知識は白表紙で十分吸収可能なので,あえて市販の書籍で予習する必要はないと思います。
検察
検察は基本的に刑事裁判の知識がそのまま流用できます。講義案も検察官志望者以外は要らないかなという感じです。
しかし,起案に独自のルールがあり,しかも論理的に自明ではないルールが多い(記載の順序,間接事実の総合考慮禁止等)ため,基本的に「終局処分起案」の白表紙を読んでルールを丸暗記することになります。
あと
起訴状の書き方にも一定のルールがあるので,この本は非常に役立ちます。検察官志望者でなくても課題や実務修習で非常に便利です。実務でも使えるので買って損はないと思います。
刑事弁護
刑事弁護は捜査弁護と公判弁護に分かれますが,基本的に刑事裁判の知識でなんとかなります。
ただ,例えば犯人性を否定するときは情状弁護はしない(しなくてもよい)など,講学上の「刑法」「刑事訴訟法」の知識だけでは導くことができない独特の価値観があり,ある程度関連文献を読んで慣れておく必要があります。
このあたりの文献は定評があります。刑事弁護系のコンメンタールは好みだと思いますが修習レベルでは不要だと思います。
司法修習に役立つ本・民事系(軽く予習しておきたい人から裁判官志望者まで)
司法修習に役立つ本を並べておきます。
ちなみに,これらとは別に,修習のテキスト的な存在として「白表紙」と呼ばれる本たちがあるんですが(表紙が白いから),それは修習開始前に研修所から段ボールで送られてくるので,わざわざお金出して買うまでもないかなって感じです。
民事裁判
司法修習最大の分量を誇る科目が民事裁判です。
範囲のほとんどが要件事実と事実認定ですが,事実認定は適当な難易度の本がないので,まずは要件事実を予習したほうがよいと思います。
【要件事実】
軽く予習するのにおすすめなのはこの3冊。
完全講義 民事裁判実務の基礎 入門編―要件事実・事実認定・法曹倫理
大島眞一裁判官著。法曹倫理部分はやらなくてOKです。
岡口基一裁判官著。大島裁判官の入門書より気軽に取り組めます。
このうち1冊を読んでおけば十分だと思いますが,迷ったら「初級者編」だけでも要件事実で大失敗はないと思います。
裁判官志望者向けはこのあたりになると思います。
岡口裁判官著。このレベルをこなすことができれば研修所の起案は間違いなくA以上でしょう。
これもレベルは比較的高いです。
この2冊のうち1冊をやる感じになると思います。
【事実認定】
事実認定は上記大島裁判官の本を除くとガチ勢向けしかないです。
これは超優秀層が解いている印象です。
事実認定体系 契約各論編1【裁判における事実認定のポイント、判断基準がわかる】
事実認定体系 契約各論編2 【裁判における事実認定のポイント、判断基準がわかる】
これは完全にオーバースペックだと思いますが,実務修習等での事実認定課題で参照するために持っていると便利です。
これは本当にガチ勢。ガチガチ。ステップアップ民事事実認定を「面白い」と思った人向けという感じです。
【民事訴訟手続】
このあたりの厚さの基本書を通読したことのある人なら,手持ちの基本書を読み返せば十分です。
コンパクト版 基礎からわかる民事訴訟法あたりは司法試験対策には良いのですが,修習対策には少し薄すぎです。
また
これを1組持っておくと修習で出される課題に便利です。超,便利です。
民事裁判だけではなく弁護修習でも役に立つので,お金に余裕がある人は手元において損はないと思います。
あと
でもなんでもいいんですが,コンメンタールを1冊持っておくと楽です。この新・コンメンタールは1冊本かつギリギリ持ち歩ける厚さなので便利です。民事裁判実務修習では裁判所のコンメンタールが使えるので困りませんが,研修所では強い味方になります。課題は早く終わらせて飲みに行きたいですからね。
民事弁護
民事弁護は修習開始前に予習する必要はあまりないと思います。民事裁判の知識が流用できるのでそちらを優先しましょう。
一応
民事弁護は民事裁判の知識があればだいたい乗り切れますが,民事訴訟マニュアルは実務修習で特に役立ちます。
要件事実マニュアルも実務修習だけ見ればなかなか役立ちます。
民事裁判ではわりと理論的なところを詰めていくので要件事実マニュアルに頼り切るのは危険ですが,弁護実務修習では強い味方になります。
また
執行・保全はなぜか司法試験までに知識を得ている前提で進んでいくので,ローできちんと執行・保全をやらなかった人は時間のあるうちに平野執行保全を読んでおくといいでしょう。
また,契約書関連では
契約書作成の実務と書式 -- 企業実務家視点の雛形とその解説
これが役立ちます。研修所での課題や実務修習で契約書のレビューや起案をすることがありますが,ひな形や解説書なしにやるのはまず無理です。