おいでよ ほうりつがくのもり(基本書レビューblog)

まったり司法試験・予備試験の基本書をレビューします

法務省「平成28年司法試験短答式試験結果」の分析

 

http://www.moj.go.jp/content/001184006.pdf

今年も択一の結果が出たので,分析してみましょう。

 

足切りライン

足切りラインは各科目別で40%,3科目合計で66%と,平成27年と同じでした。多くの受験生の予想通りという感じでしょう。

注目したいのは,平成27年に比べて全体で1000人程度受験生が減っているのに,民法足切り対象者は100人程度増加していることですね。

受験生の6%が民法足切りに遭ったわけです。

しかし,各科目の平均点は平成27年と平成28年でそれほど変化していません。

問題が難化したというよりは,民法を重視しない受験生の割合が増えた…ということでしょう。

よく見ると,残り2科目の足切り対象者も「微減」という感じです。

これだけ見ると,「短答自体を重視しない受験生」が増加しているのか?と疑いたいところです。

しかし,全体の足切り突破率は昨年から変化せず67%程度であり,短答合格者平均得点率も同じく77%程度です。

つまり,(足切り対象者ではなく)合格者に目を向ければ,短答の得点率はほぼ変化していません。

したがって,受験生が短答に割くリソースは,全体的にはあまり変化していないと思われます。

 

目標ラインは?

3科目になって2年間,足切りライン66%が維持されました。今後も,安定して70%程度得点できれば,足切りに遭う可能性は低いでしょう。

しかし,70%を目標にするのは危険です。

それどころか,ここ2年の短答合格者平均である76%を目標にするのも危険だと思われます。

というのも,仮に平成28年の最終合格者を1500人とすると,最終合格者ラインに入るためには,上記法務省の資料によれば,139点が必要です。

これは,得点率にすると79.4%です。短答で80%得点しておかないと,論文でビハインドを負ってしまうことになります(この点は平成27年と同様です)。

というわけで,最終合格を目指す受験生としては,短答では80%が目標ラインになるでしょう。

 

対策

平成27年と同様,民法,刑法を中心に対策するのがよいでしょう。

民法は,単純に配点が他の1.5倍ですから,ここで稼ぐのが最も効率的です。

刑法は,条文が少なく,問題のパターンが限られているので,投入したリソースが裏切られにくい科目です。

憲法は,毎年足切り対象者が少ないので,危険度は低い科目です。また,部分点がつきにくいので,本当の実力者以外は高得点を目指しづらく,コスパが圧倒的に悪い科目です。

基本は,全科目肢別本をやり,民法と刑法は憲法より1周程度多めに回すのがよいでしょう。

肢別本〈1〉公法系憲法〈平成27年版〉

肢別本〈3〉民事系民法1 総則/物権〈平成27年版〉

肢別本〈4〉民事系民法2 債権/親族/相続/要件事実〈平成27年版〉

肢別本〈7〉刑事系刑法〈平成27年版〉

 

過去記事

平成27年司法試験短答式試験結果の分析 - おいでよ ほうりつがくのもり(基本書レビューblog)

各科目の基本書・演習書まとめ - おいでよ ほうりつがくのもり(基本書レビューblog)

 

 

かけこみ司法試験

はじめに

この記事は「直前期までサボっていた人が短期間の勉強で司法試験の合格最低ラインを攻略する」という視点で書いています。

直前期はつらい時期だと思いますが,過去の自分を呪いながら頑張りましょう(^o^)

憲法

憲法学読本 第2版の人権部分だけを読み,肢別本〈1〉公法系憲法〈平成27年版〉を1周して,間違えたところだけやり直す。

その時間すらない人は条文・判例本〈1〉公法系憲法〈平成27年版〉を通読する。

行政法

事例研究 行政法 第2版の解説部分だけを読む。解く時間がもったいない。解説がない問題は無視でOK。

少し余裕があれば行政判例ノート 第3版をななめ読みする。

民法

入門民法(全)を通読する。これよりうまくまとまっている本はない。民法は満遍なく出題されるため,捨て分野を作りにくいので必ず通読。ちなみに民法入門 第7版は長いので,多分直前期の通読は心理的に困難。

肢別本〈3〉民事系民法1 総則/物権〈平成27年版〉肢別本〈4〉民事系民法2 債権/親族/相続/要件事実〈平成27年版〉は必ずやる。

民法は短答の配点が高いので失敗すると合格最低ラインを超えるどころか足切りに遭う危険が大きい。

あと,その場で規範を考えなければならない問題が多いので,短答知識を応用すれば実は論文もなんとかなるのが民法

趣旨・規範ハンドブック〈2〉民事系―司法試験/予備試験ロースクール既修者試験はよくまとまっているが民法は論点落ちが多いのでこれ1冊に頼るのは怖い。短答をやった方が網羅性は高い。

要件事実は丸暗記でなんとかなる問題は出ないので,趣旨規範か要件事実マニュアル 第1巻(第4版)総論・民法1で錯誤,解除といった超超基本的なところだけ抑えておく。

商法

趣旨・規範ハンドブック〈2〉民事系―司法試験/予備試験ロースクール既修者試験の商法部分を通読する。

会社法,商法ともに相当詳しいので,あとは条文をめくればなんとかなる。

民訴

コンパクト版 基礎からわかる民事訴訟法を通読する。

誘導に乗れば爆死はないので,実は一番少ない勉強量で最低ラインを超えられる科目。

刑法

基本刑法I―総論[第2版]基本刑法II?各論を通読する。

通読はきついように思えるが,相当細かい判例まで載っているのでこれさえ読んでおけば論文と短答両方に対応できる。

刑法の短答は他2科目に比べて明らかに範囲も狭く簡単なので,自分の苦手だと思うところだけ肢別本〈7〉刑事系刑法〈平成27年版〉で復習しておく。執行猶予とか覚えにくいので短答前日とかにやって当日だけ記憶していれば十分。

短答はバッチリで論文だけかけこみで対策したい人は,趣旨・規範ハンドブック〈3〉刑事系―司法試験/予備試験ロースクール既修者試験もよいが各論が弱いので各論だけは基本刑法を読んでおいたほうが無難。

刑訴

難しい問題は出ないので趣旨・規範ハンドブック〈3〉刑事系―司法試験/予備試験ロースクール既修者試験でなんとかなる。時間内に書ききる気合だけ。

 

司法試験 かけこみ両訴―答案構成型サブノート 民訴・刑訴〈平成16年改正対応版〉は条文ベースで非常にわかりやすいが,さすがに古い。相当時間のない人はこれで突っ込むのも手。

選択

司法試験論文対策 1冊だけで労働法―労働基準法・労働契約法・労働組合法は神。

ただ本当に選択科目をやる時間が無い人は論点解析 経済法の解説だけを読んで経済法で受けるのがいいだろう。本当によくまとまっている本。

法科大学院ガイドを読む意味

自分がロースクールに進学した当時は全然知らなかったんですが,世の中には法科大学院受験ガイド本というものがあり,そこそこ売れているようです。売れていなければ,何年も連続で出ませんからね。(売れていないのに,法科大学院からの広告料欲しさに少しだけ刷っている可能性もありますが…。)

 

 半強制的に読む機会があったのですが,「すでに法律家を目指している人」向けの本ではない,と思いました。「目指すかどうか迷っている人」で「予備試験ではなく,法科大学院を中心に司法試験までのルートを組み立てている人」をターゲットにしている感じです。掲載されている情報も,法律家賛美,法科大学院賛美で,特に法科大学院選びには役立たないように思います。端的に言えば,法科大学院の広告集です。

法律家や法科大学院について暗い未来ばっかり報道される昨今,明るい視点からこれらを分析した文章が読みたい人にはおすすめです。