おいでよ ほうりつがくのもり(基本書レビューblog)

まったり司法試験・予備試験の基本書をレビューします

行政法の基本書・演習書・判例集

2017年3月更新。

入門書

行政法入門 第7版

行政法入門 第7版

 

 行政法初学者向けに最適な入門書。著者の藤田宙靖は学者出身の元最高裁判所判事。

 有名な行政法の入門書である『プレップ行政法  第2版 (弘文堂プレップシリーズ)』は法律論にほとんど触れない本当の「入門書」なので、すでに民法等の他の法律の学習を始めている人なら、最初は藤田行政法入門から入るのが退屈しないだろう。

 行政法は大量の個別法を扱うので、個別具体的な議論に入りがちだが、まずは藤田行政法入門で全体像を掴むのが良い。何度もの改訂で内容も充実してきているので、時間のない予備試験受験者などは,これを基本書代わりに手早く読み切り、すぐ演習に入るという手段もある。

 

基本書 

初学者におすすめ

行政法 第5版

行政法 第5版

 

  各種国家試験に関わる橋本教授と櫻井教授が執筆したスタンダードな基本書(お二人はご夫婦。愛の結晶である)。司法試験、予備試験のみならず、公務員試験でも圧倒的なシェアを誇る。二色刷りで読みやすく、試験に必要最低限のことだけ書いてあるため、一気に読み切って早めに演習書に取り掛かるのが良い。項目ごとにちょっとした「まとめ」があるのも受験生にとっては高ポイント。

 いわゆる学者の書いた本だが、わかりやすさ・簡潔さで試験対策的にも予備校本を超えてしまったテキスト。もっと厚い本を読みたい人も、まずはこの本を通読してから次に進むのが良い。

 ちなみに索引もなかなか使いやすいので、初学者から中級者まで広くお勧めできる。

 とりあえずこれを使っておいて、辞書が欲しい人は塩野(行政法1 -- 行政法総論 第五版補訂版行政法2 -- 行政救済法 第五版補訂版行政法3 -- 行政組織法 第四版)を横に置いて勉強するというスタイルが無難だと思う。公務員試験では塩野信仰があるためか、予備校ではいきなり塩野を勧めたりするようだが、分量的にもサクハシメイン利用で塩野を辞書にした方が学習効率は良い(というか,いきなり塩野を読破できる学力と気力のある人は何やっても受かる)。

2冊目以降におすすめ

行政法

行政法

 

  著者は東大教授。上記「サクハシ」より少し詳し目。サクハシにありがちな「まとめ」等の受験生に配慮した記載が嫌いな人、東大教授の基本書で揃えたい人はこちらを読むといいだろう。

 ちなみに同一著者でより詳しい分冊版基本書もある(行政法概説1 行政法総論 第5版行政法概説2 行政救済法 第4版行政法概説3 --行政組織法/公務員法/公物法 第3版)が、試験対策的にはここまで大量に基本書を読む時間があれば問題演習に回したほうが良いと思われる。ただし、概説3は数少ない組織法の基本書としてはかなり親切であり、定期試験前にざっと読んでおくことを勧める。

 

行政法? 現代行政救済論 第2版

行政法? 現代行政救済論 第2版

 
行政法1 現代行政過程論 第2版

行政法1 現代行政過程論 第2版

 

 個人的には初学者に一番オススメの基本書。サクハシよりも図表やケースメソッドを多用している。処分性や原告適格といった救済法上の難解概念もケースメソッドや個別法紹介を駆使して説明してくれるので、丁寧さは基本書の中でも随一。

 また詳しさもちょうど良く、「サクハシでは薄すぎるが宇賀・塩野では厚すぎる」という受験生のニーズをうまくキャッチした本。脚注が丁寧なのも嬉しい。全体的に判例の事案をベースにしたケースメソッドを使用しながら進むので、「どういう事例でどの法理を使うのか」という試験対策を意識しながら勉強できるのが良い。

 

基本行政法 第2版

基本行政法 第2版

 

 受験対策を強く意識した「基本」シリーズの行政法

 判例をベースにしたケースメソッドで、図表を多用している点は上記大橋行政法に近い。こちらは重要判例を薄く広く拾っていくスタイルで、より受験対策的。

 論証を意識してか、記述が所々簡潔を極めているので、初学者よりも行政法二周目の人やギリギリ答案が書けるレベルに達したいが時間がない人にオススメ。

 一方で、原告適格の判旨の引用がなかったり、百選などの判例集を横に置いて読み進めるレジュメという感じを受ける。多分、著者が講義で使っているレジュメをベースに本にしたのだろう。他の箇所は非常に良いのだが、原告適格のところだけはもう少し詳しく書いてほしいと思った。『行政救済法 (法律学講座)』で補ったけど。

 非常に網羅的・完結なので、自分は試験前に必ず『行政判例ノート 第3版』と一緒にざっと読み返すようにしているが、コスパが良い。

例解 行政法

例解 行政法

 

  広く薄く行政個別法を解説する本。姉妹本の演習 行政法では「基本書」と分類されているが、従来の行政法の基本書とは異なり、個別法の解説に多くのスペースを割いている。一応、いわゆる行政法総論・行政救済法についても一通りの解説(まとめ)はあるので、時間のない受験生はむしろ「例解」の総論・救済法まとめ部分だけ一気に読むのがよいかもしれない。まとめ部分だけだとサクハシより薄い。

 過去に詳細なレビューを書いたので、そちらもどうぞ。

 原田大樹『演習 行政法』『例解 行政法』レビュー - おいでよ ほうりつがくのもり(基本書レビューblog)

行政法総論を学ぶ (法学教室ライブラリィ)

行政法総論を学ぶ (法学教室ライブラリィ)

 

 法学教室ライブラリシリーズ。著名判例を元にしたケースメソッドを使いながら、行政法総論の主要な議論を趣旨から書き起こしていく。ケースメソッドとその解説がかなりしっかりしているので、基本書と演習書の中間的存在。行政手続法もカバーしてくれているのが受験生には嬉しい。

 司法試験・予備試験レベルで要求される総論を学びたい人や、定期試験で周りに差を付けたい人におすすめ。

行政救済法(第2版) (法律学講座)

行政救済法(第2版) (法律学講座)

 

 ついに改訂。

 救済法の基本書では一番解説が厚く,理解しやすい。完全に事例問題を解くための基本書。分厚いので時間がない人には向かないが,じっくり救済法に取り組む人にはぜひおすすめしたい。

 ロースクールの定期試験などで救済法だけの試験があり,救済法だけを徹底的に勉強して成績を取る必要がある場合にはかなり有用だろう。

演習書

事例研究行政法

事例研究行政法

 

  ついに改訂された神演習書。

 1部(難しい学部定期試験レベル)・2部(法科大学院の定期試験レベル)と3部(司法試験レベル)という構成になっている。実際に著者が法科大学院の定期試験で出した問題を再利用しているらしい。問題・解説ともに非常に良質であり(学生がわかっていないところをよくわかっている!),はっきり言って予備試験・司法試験受験生なら「事例研究」をやらない理由はない。みんなやってる演習書の決定版。

 合格レベルにはこれ1冊で十分。コラムには優秀層向けの記述もある。まさに神演習書である。

 

 

行政法 事案解析の作法 第2版 (法セミLAW CLASSシリーズ)

行政法 事案解析の作法 第2版 (法セミLAW CLASSシリーズ)

 

  学部生はあまり知らないかもしれないが、法学セミナーという雑誌の人気連載だった。

 上記事例研究を完璧にやり切った人なら新しく得るものは少ないかも。事例研究より問題の難易度は低い。

 解説は相当丁寧なので、事例研究の基礎問題レベルが難しいと感じる人は、いったん「作法」を読みきってから事例研究に臨むという方法もあるだろう。

 事例研究が司法試験対策の決定版としたら、こちらは難易度的にやや予備試験寄りか。

 

演習 行政法

演習 行政法

 

 超オススメ。事例研究では厚く解説されていない基礎や、個別法の解釈手法、基本概念の論証方法など、事例研究の行間を埋める最新最強の演習書。現役の京都大学教授である著者自身が書いた答案例がついている点だけでも、事例研究と併読する価値がある。


 こちらで詳しくレビューしている。

 

基礎演習 行政法

基礎演習 行政法

 

 基礎演習というだけあって比較的簡潔な設問と解説。事例研究、事案解析の作法より更に難易度は低い印象。わかりやすく丁寧に書いてあるので、いきなり事例研究や作法はちょっと…という人におすすめ。分量的にも1日で読み切れるので、試験前の応急手当にも笑。

 

ロースクール演習 行政法

ロースクール演習 行政法

 

 有用な下級審裁判例をそのまま問題にしましたという感じの作問。その分、あてはめの上手さを学ぶことができる。実際にあてはめ中心の解説で、理論的な解説は薄い。理論を他の本で学んだ人が、あてはめの練習をするには最適。司法試験と同様、「会議録」等の資料がついた問題形式になっているのが嬉しい。

 学部生にはあまり知られていないが、『行政法解釈の基礎: 「仕組み」から解く』では『事例演習』と並んでオススメされている。。欲を言えば、もう少し基本書へのリファレンスを徹底させてほしいが、起案(というか受験対策)に特化した良書だと思う。

 

行政法ガール

行政法ガール

 

 ラノベ風の文体で司法試験過去問を解説した異色の1冊。見た目はポップだが内容は「出題の趣旨」「採点実感等」を徹底して研究していることがわかるハイレベルな参考書である。「こう書けば受かる」というひとつの解を提示してくれているのは本当にありがたい。個人的にはラノベ部分のストーリー展開はまったく好みではないが言い切るスタイルの解説は好みである。

 司法試験の過去問を題材にしているだけあって、そこそこ難易度は高いので、行政法未修者がこの本から行政法に入門するのは困難。教科書くらいは読んでから臨みたい。

 

行政法解釈の基礎: 「仕組み」から解く

行政法解釈の基礎: 「仕組み」から解く

 

 演習書というより起案のノウハウ本。タイトルは論文集っぽいが、橋本先生の行政法解釈に関する見解を簡単に紹介した後、自ら司法試験の過去問等を解いてみせるというスタイルの本である。相当高度な解釈技法を簡潔に説明してあるので、初学者がぱっと読んで理解できる本ではないと思った。司法試験の問題をいまいち解ききれない中級者~上級者向けといったところ。

 また、司法試験の全過去問が収録されているわけではないので注意。ちなみに事例研究ともコラボレートというのがウリらしいが事例研究の問題は1問しか出てこない。事例研究の3部の解説を求めて買う人は注意。

 司法試験の過去問の解き方を指南する部分は、非常に参考になった。しかし、「出題の趣旨」や「採点実感等」に忠実な解説ではない。むしろ作問や「出題の趣旨」等に批判的な解説が繰り広げられるので、あまり鵜呑みにするのは危ないかな、と感じた。また、例えば本書の序盤から行政作用のフローチャートを書くことが推奨されているのだが、試験時間中に書けるのか?という疑問もある。行政法の学習が進んでいる人向けに書かれているのは間違いないが、解釈技術という暗黙知を公知にするという点で、全体としては大満足の良書であった。

 

事例から行政法を考える (法学教室ライブラリィ)

事例から行政法を考える (法学教室ライブラリィ)

 

 高レベルの行政法演習書。

 問題は難しいが,司法試験の形式・レベルに準拠しており,司法試験本番を想定した演習ができる。

 解説も非常に丁寧。ただし,かなり高度な内容を解説しているところが多くあり,司法試験上位合格を目指さない人は読み飛ばしながら演習したほうが効率が良いと思う。

 現在の司法試験の形式・レベルに準拠した演習書はこれくらいしかないと思われるため,近年の過去問をこなしたうえでさらに本格的な司法試験対策をしたい人におすすめ。

 

判例

行政判例百選1 第6版 (別冊ジュリスト 211)

行政判例百選1 第6版 (別冊ジュリスト 211)

 
行政判例百選2 第6版 (別冊ジュリスト 212)

行政判例百選2 第6版 (別冊ジュリスト 212)

 

 自分は百選シリーズの信者だが、行政法に関してはちょっと…という感じ。もちろん読んだが、やたらと収録判例数が多く、解説もやや趣味的で試験対策に使いづらいものがある。自分で取捨選択しながら読んでいく必要がある(判例集というものはだいたいそうだとしても、行政法の百選は特に取捨選択する必要があると思う)。また総論の判例だから1、救済法だから2に収録されているというわけではないので注意。

 

行政判例ノート 第3版

行政判例ノート 第3版

 

 解説がコンパクトなので百選よりもおすすめできる判例集。司法試験・予備試験対策ならこれと基本書で十分。サクハシの判例番号に対応しており併せて使いやすい。引用箇所の背景が青くて線が引きにくいので改善してほしい。

 

判例で学ぶ行政法

判例で学ぶ行政法

 

宇賀先生が重要判例をていねいに解説。判例集というより参考書。自治実務セミナーでの連載だったらしく、正直連載当時は全く読んでいなかったが、書籍で一気読みして内容的には大満足。重要判例に絞って解説してくれるので、行政法のポイントを効率よく理解できる。また最先端の問題意識が展開される部分もあり、司法試験で狙われそうだと思った。

 

 

他の科目の記事は下記からどうぞ。

campho.hatenablog.com