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まったり司法試験・予備試験の基本書をレビューします

倒産法の基本書・演習書・判例集 レビュー

2015.10 最終更新

基本書

倒産処理法入門 第4版

倒産処理法入門 第4版

 

倒産法選択者の9割が読んでいるメジャー入門書。著者は超有力な学者。1冊で司法試験の倒産法の全範囲(破産法+民事再生法)をカバーしている。初学者でも倒産法の全体像を把握できるように配慮されたシンプルな記述である。

薄くてすぐ読めるので、この本から倒産法の学習を始めるのが良い。

 

民事再生法入門 第2版

民事再生法入門 第2版

 

民事再生法の入門書としては最適。入門書というだけあって条文中心のシンプルな解説である。とはいえ司法試験ではあまり難しいことは聞かれないので、この本と百選で知識的には十分。まとめノート作成の際にもお世話になった。案外使っている人が少ないが非常におすすめ。 

 

倒産法概説 第2版補訂版

倒産法概説 第2版補訂版

 

上記『倒産処理法入門』を読んだ後に2冊目の本格的な基本書として読んだ。

破産法+民事再生法の全範囲をカバーしたメジャー教科書。執筆陣は東大・京大系有名学者で超豪華。共著のため、シンプルで中立的な記載になっている(「判例は~という。また~という説がある。」という感じ)。学説を細かくやりたい人には向かないが、判例通説中心に学習したい人なら十分である。

 

破産法・民事再生法概論

破産法・民事再生法概論

 

こちらも倒産法の全範囲をカバーした教科書。共著であり、執筆陣は上記『倒産法概説』並に豪華である。

判例通説中心に学習したいなら『倒産法概説』でもよいのだが、『倒産法概説』は索引があまり充実していないという欠点がある。索引を多用する人はこちらの『破産法・民事再生法概論』がおすすめ。調べ物に圧倒的に役立つ。出典の引用も細かく、各種コンメンタールへのアクセスがしやすいのも学習者にはうれしい。

ちなみに倒産法概論という本もあるので、間違えないように。

 

破産法・民事再生法 第3版

破産法・民事再生法 第3版

 

ついに改訂された。基本書というか、伊藤説のエッセンスたっぷりの体系書である(分厚い!)。著者の体系で書かれているため中立的な記述ではない。しかし、版が新しいことは試験対策において最強のメリット。平成20年代に重要判例がガンガン出ている倒産法なら尚更である。伊藤説だけでは不安、司法試験においてはあくまで客観的な記述を心がけたい、という人は、他の基本書でセカンドオピニオンをとるのがよい。

ちなみに辰巳の倒産法関連の書籍はだいたいこの本をベースに記述されていると思われる。

 

司法試験論文対策 1冊だけで倒産法―破産法・民事再生法

司法試験論文対策 1冊だけで倒産法―破産法・民事再生法

 

入門書ではなくまとめノートなので、これ1冊読んでもまったく倒産法は理解できない。 既刊の趣旨・規範ハンドブックと記載がかなり被っている(同じ執筆者なのか?)。ひととおり倒産法の基礎理論の学習を終えた人がまとめノート作成の手間を省くのに使える。自分もまとめノートを自作する際の参考にした。

 

司法試験論文選択科目趣旨・規範ハンドブック 倒産法

司法試験論文選択科目趣旨・規範ハンドブック 倒産法

 

 上記の『1冊だけで倒産法』と同様、まとめノートといった感じ。伊藤説をベースに判例理論をまとめてある。意外とクオリティが高いので『1冊だけで~』とあわせて読めばかなりの範囲の基礎知識をカバーできる。欠点は(予備校本はどれもそうだが)民事再生法の記述が薄いことである。おそらく破産法は旧司法試験のノウハウがあるぶん記述が厚くなるが民事再生法は新しいのでノウハウが予備校にたまっていないのだろう。とはいえ司法試験では半分以上が民事再生法からの出題であることも珍しくないので、民事再生法の知識は自分で補いながら使わなければならない。

 

破産・再生

破産・再生

 

民訴でおなじみ藤田広美先生の倒産法教科書。実務家が書いた予備校テキストといった感じ。受験に必要な知識を効率よく詰め込むのに向いている。判例通説をぱぱっと理解してすぐ演習に移りたい人はこれでも良いだろう。 少し古いので必ず判例集で最新判例の確認を。

 

倒産法を知ろう

倒産法を知ろう

 

司法試験考査委員の実務家が執筆した倒産法の教科書。実務本かと思いきや読んでみると普通に学生向けの教科書である。 司法試験の範囲は網羅している。あてはめのコツみたいな知識がちょくちょく出てくるので受験生にはうれしい。受験用の教科書としては非常に優秀である。

 

演習書

基礎トレーニング倒産法

基礎トレーニング倒産法

 

阪大教授や実務家らが執筆した倒産法の基礎的演習書。入門書と演習書の中間のような構成になっており、簡単な事例を出してそれを簡潔に解説するケースメソッドで進んでいく。

薄いので、たまに学説の理由付けが書いていないことは欠点。しかし、250頁程度で倒産法全体を概観する演習書という縛りの中では多少の省略は仕方ないだろう。

逆に、判例・通説・伊藤など有力反対説の結論は徹底してフォローされている。

司法試験はこれ1冊で十分!という類の本ではないが、初学者~中級者が倒産法の条文と判例を徹底的にブチ込むには最も適した本。基本書とセットで買って損はしない。

 

倒産法演習ノート―倒産法を楽しむ22問 第2版

倒産法演習ノート―倒産法を楽しむ22問 第2版

 

かなり難しいが、解説付きの司法試験本番レベルの演習書が他にないため、これを使うことになる。この手の本の常として答案例はさほど参考にならないが、解説はさすがの安定感で、論文のレベルに達しているものもあると思う。何度もやり込める本。司法試験のネタ元のひとつ。

 

ロースクール倒産法 第3版

ロースクール倒産法 第3版

 

上位合格を狙う人向け。ここまでやらなくても合格点はとれるはず。 問題は素晴らしいが、詳しい解説がないので講義でこの本を使用するという人以外にはおすすめしない。

 

ロースクール演習 倒産法

ロースクール演習 倒産法

 

解説はそこそこ充実。ただ、設問ごとのクオリティの差が激しく初学者向けなのか中級者向けなのか上位合格を狙うための本なのかハッキリしない。受験新報からの書籍化のわりには説明があまり受験を意識していない謎の本。

しかし、読みやすいことは読みやすい。基礎トレーニング倒産法の次くらいのレベル。演習ノートは難しすぎて読めないという人向け。

 

論文基本問題 倒産法80選

論文基本問題 倒産法80選

 

レベルとしては入門向け。短い事例と短い解説、模範答案。試験前にぱぱっと回せるボリュームなので基礎知識の確認には向いている。難しいことは扱っていないので学部の破産法の試験対策にも使える。 

 

判例

倒産判例百選 第5版 (別冊ジュリスト 216)

倒産判例百選 第5版 (別冊ジュリスト 216)

 

 この科目では必須である。また、他によい判例集がないので(刑法でいう前田250選のようなものがない)、実質これ一択。

 

 

 

 

 

 

他の科目の記事は下記からどうぞ。

campho.hatenablog.com