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未完の憲法(奥平康弘、木村草太) レビュー

 

未完の憲法

未完の憲法

 

 木村草太ファンなので読んだ。

東大出身の憲法学者2人の対談本。薄い(150頁くらい)ので、一瞬で読める。

憲法学というのは、国の根幹に関わる非常に重要な学問である。にもかかわらず、なぜか素人が「学者」を名乗ってテレビに出たりしてもよい、とされている不思議な学問でもある。非研究者のコメンテーターがテレビや雑誌で好き勝手論じるので、(憲法学を体系的に勉強したことのない)一般の人が「憲法イデオロギーを撃ちあう空中戦ばかりやっているものだ」と考えて、憲法に関する議論を回避してしまうことも理解できるように思える。

そういうカオスな現状のなかで、この本はきちんとした(学術的なバックグラウンドがある)「憲法学者」が改憲について一般の人にもわかりやすいように論じた本である。スタンスとしては、解釈改憲による集団的自衛権行使反対、である。はっきりしている。憲法とはなにか?というところから説き起こして、解釈改憲や、法の支配といた安倍政権の重要課題について批判的に論じていく。

こうした議論は、基本書や法学部の憲法の講義でもほとんど触れられないところだと思うので、できる限り多くの法学徒に読んでもらって、非法学徒の友人に質問されたときに、(個々の課題に賛成・反対するかはともかく)基本的な議論について、非法学徒にわかるような説明ができるようにしてほしいと思ったので、基本書ではないですがレビューしておきます。