おいでよ ほうりつがくのもり(基本書レビューblog)

まったり司法試験・予備試験の基本書をレビューします

平成27年司法試験短答式試験結果の分析

法務省公開のデータ

平成27年(2015年)6月4日16時、平成27年司法試験短答式試験結果が発表されました。

6月4日16時現在、法務省から発表されているデータは以下の通りです。

法務省:平成27年司法試験短答式試験結果

分析

足切りライン

受験生にとって最も重要なポイントは、足切りラインがどこか、ということです*1

法務省の発表によれば、憲法民法・刑法の各科目ごとに4割以上、合計点が114点/175点以上の者が、短答式試験の合格者とされています。

そこで、約65.14%が足切りラインということになります。

6割5分得点できていても落ちる、と考えると、かなりレベルの高い争いに思えます。

 しかし、短答式が7科目あった平成26年司法試験では、各科目4割以上、合計点210点/350点(ちょうど60%)以上が短答式試験の合格者とされていました。

つまり、4科目も受験生の短答負担が減ったのに、約5%しか足切りラインが上昇していないことになります。

受験生の短答知識のレベルは、3科目化を受けても大幅に上昇していないと考えるのが妥当でしょう。

 また、足切りを通過して論文式試験を採点してもらえるのは、毎年5000人程度です。

この5000人という数は、採点の都合から設定されていると考えられるので、採点委員の数が減少しない限り、平成28年以降の司法試験も、同様に得点率65%程度が足切りラインになると予想できます。

目標ライン

以上を踏まえると、短答式で6割後半~7割程度得点できれば足切りは突破できることになります。

しかし、最終的な合格者数を考慮してみると、7割が目標ラインで良いのかは微妙です。

 また、平成27年の合格者平均点133点(76%)も、目標ラインにすべきではありません。

 目標ラインを考察するために、仮に、平成27年司法試験でも、最終的な合格者数が政府提言通り1500人確保されるとします。

平成27年の合計点別の人数分布をみると、合計140点までに累計1412人、合計141点までに累計1542人がいますから、8割以上得点すれば、1500人以内に入ることができ、短答式ではビハインドを負わないことになります*2

 逆に、8割以下の得点だと、論文式で挽回しなければなりません。

 したがって、最終合格を目指す受験生としては、短答式では8割の得点が目標ラインとなるでしょう。

データ*3を読む限り、ボリュームゾーンもそのあたりのようです。

対策

短答式の配点は、憲法民法:刑法=50:75:50点ですから、他の1.5倍の配点のある民法を重点的に勉強するのが基本ということになります。

 それでは、次に重視すべき(=リソースを優先的に割くべき)科目は憲法、刑法のどちらなのでしょうか。

 ポイントは、最低ライン未満の者と、50点(満点)得点者の数になると思います。

 憲法の最低ライン未満(得点率40%未満)は188人ですが、刑法の最低ライン未満は350人です*4

 それでは刑法が特別に難しいのかというと、民法の最低ライン未満が336人であり、刑法とそう変わらないことから、刑法だけが難しいわけでもなさそうです。

それどころか、刑法の満点は182人*5。受験生の2%程度が満点をとっていることになります(!!!)。憲法民法の満点はそれぞれ8人、9人と、受験生の0.1%程度であることを考えると、これは驚異的な数字です。

民法は範囲が広く問題数が多いので、満点が取りにくいことを考慮すると、単純に比較はできませんが、少なくとも刑法が憲法と比べて「実力通り点数が出る」試験になっていることは明らかです。

 また、憲法の最低ライン未満者が上記のように刑法、民法の半分程度であることをあわせ考えると、「憲法は実力があっても高得点は取りにくいが、実力がなくても足切りにはかかりにくい」ことがわかります。

 したがって、憲法は肢別本などでほどほどに勉強しておき、民法・刑法は肢別本だけでなく過去問パーフェクトあたりまでみっちりこなしておいて、さらに基本書を読み込み満点を狙う、というのが基本的な戦略になると思います。

肢別本〈1〉公法系憲法〈平成27年版〉

肢別本〈3〉民事系民法1 総則/物権〈平成27年版〉

肢別本〈4〉民事系民法2 債権/親族/相続/要件事実〈平成27年版〉

肢別本〈7〉刑事系刑法〈平成27年版〉

司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト〈3〉民事系民法1〈平成27年版〉

司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト〈4〉民事系民法2〈平成27年版〉

司法試験&予備試験短答過去問パーフェクト〈7〉刑事系刑法〈平成27年版〉

campho.hatenablog.com

*1:足切りに遭うと、論文式試験の採点すらしてもらえず不合格ということになります。

*2:きれいに8割が1500人ラインになっています。試験本番の問題用紙には部分的の記載がなく、部分点の設定は試験後に行われている(つまり、試験後にある程度受験生の総得点を操作することができる)と考えられるので、司法試験委員会は「この程度の問題であれば本来8割は得点できないと合格させるに値しない」と考えている可能性があります。

*3:http://www.moj.go.jp/content/001146258.pdf

*4:http://www.moj.go.jp/content/001146258.pdf

*5:http://www.moj.go.jp/content/001147388.pdf