民事裁判起案マニュアル
傾向と対策
2回試験&即日起案の民事裁判科目の出題は,おおむね以下のとおりです。
- 訴訟物,その個数,併合態様を書かせる問題
- 手続の知識問題
- 要件事実を整理させる問題
- 事実認定問題
訴訟物問題の対策
白表紙(特に,「新問研」)を読んだうえで,実体法(民法,商法)の知識を軽く復習しておけば十分です。
併合態様が書けるよう,民事訴訟法の教科書を復習しておくとよいと思います。
訴訟物の学習は要件事実の学習と被るので,詳細は要件事実の項で触れます。
手続の知識問題
あまり難しい問題は出ません。
薄い民事訴訟法の教科書を復習しておけば十分です。
弁論主義全般,反訴あたりが頻出なので一読しましょう。
要件事実を整理させる問題
基本的な知識については,要件事実入門という超薄い「新問研」の解説書のような本がありますので,「新問研」を読んでもよくわからない人は読むとよいでしょう。
要件事実は(司法試験レベルを超えた)実体法の深い理解を試される問題も出ますが,変に新しいものや複雑なものに手を出すよりは,新問研を読んだうえで,基本書で民法の知識を再確認しておくのが良いと思います。
ただし任官希望者は,優秀層に差をつけられないよう,修習開始前に要件事実論30講 第3版や要件事実問題集〔第4版〕を1周しておくことを強くおすすめします(後者の方がレベル高い)。それ以外の人は,これらのうち1冊を2回試験前に通読すれば十分です。
事実認定問題
完全講義 民事裁判実務の基礎 入門編―要件事実・事実認定・法曹倫理が結構わかりやすいです。
任官希望者は事実認定の考え方と実務とステップアップ民事事実認定を読むのが無難だと思います。民事事実認定は刑事と異なり紛争類型が多く,紛争類型ごとに特徴があるので,大量の文献に触れておいたほうが有利です。
事実認定のパターン処理
ここからは優秀層や任官希望者には不要な話になります。
民事事実認定は次のようにパターン化できます。
- 4つの類型のいずれかを書く(4類型については白表紙参照)
- 時間の許す限り記録を読み動かし難い間接事実を「契約前」「契約当時」「契約後」の時的要素でグルーピングしながら答案構成用紙にメモ
- グループごと,間接事実ごとにナンバリングして,間接事実を1個ずつ「経験則」を明示して意味合い・重みを書く
- 「以上総合すると…である」と総合評価して結論を書く
これで間接事実を大量に拾いさえすればB未満の評価になることはまずないと思います。
ポイントは,経験則の内容や,意味合い・重みの評価は適当でもよいので(よくわからなかったら,「~があったら,~が通常である」程度でOK),とにかく大量に事実を拾うことです。事実ごとに配点があるので,大量に拾えば低評価を免れることができます。重要そうな事実を厳選したり,評価の美しさにこだわって少ししか事実を拾わないのは危険です。
また,動かし難い事実以外の事実は,思い切って捨てるのもポイントです。証明できるかどうか怪しい事実は,頑張って認定して評価しても,配点が少ない場合が多いからです。
研修所の起案に共通しますが,「評価のうまさ」に対する配点は微小だと思います。「事実を一定数あげているかどうか」で勝負が決まると考えましょう。
記録の効率良い読み方
前提として設問の順番ですが,訴訟物問題から始まり,主張(要件事実)整理問題を経て,事実認定問題は最後の設問となることが多いと思います。
まず,訴訟物問題,主張整理問題の問題文を把握し,何が問われているのか把握しましょう。
それから,期日調書を最初に読み,訴訟物の追加や「◯◯の事実は✕✕の抗弁としては主張しない」などの落とし穴がないか把握します。調書を後回しにすると,これらの落とし穴を見落とす危険があります。また,記載からなんとなく本件の訴訟物や争点の予想がつくこともあり,期日調書を最初に読むのは色々とメリットがあります。
次に,主張書面を読みます。私は,相手方の認否を記録上に◯△✕で書き込みながら読みました。ちなみに,起案の記録は最終準備書面提出前の段階のものが多く,最後に綴られている(最新の)準備書面に対する相手方の応答(認否)がないようにみえる場合がありますが,この場合はたいてい期日調書に認否が記載されています。認否が「ない(沈黙)」と思わないように注意してください。
主張書面を全部読み終わり,再度訴状(や,後から主張が追加された場合は当該部分)を確認すれば,訴訟物が推測できるはずなので,まず訴訟物だけ答案構成してしまいましょう。
次に,主張整理問題を解きます。この際の記録の読み方ですが,まず訴状と答弁書を熟読し,請求原因と抗弁だけを整理しましょう。すべての抗弁を整理しきってから,再抗弁に移るとミスが少ないです。この段階で事件の全体像がよく理解できない場合は,書証をとばして,先に尋問調書を読んでしまいましょう。研修所の記録は争いのある点に絞って尋問してくれるので(笑),何が重要なのか理解する助けになります。
また,事実認定問題にたどり着くまでは,書証は見なくてもよいと思います。
他の問題をすべて解き,事実認定問題にたどり着いたら,先程認否を書き込んだ主張書面をみて,◯のついた間接事実を答案構成用紙の「動かし難い事実リスト」に入れます。次に,△や✕のついた間接事実を確認し,書証の裏付けがあるものは同リストに入れます。次に,尋問調書を読んで,原告と被告で供述が一致する事実を探し,同リストに入れます。ここまで読めば十分です。後は一気に書きましょう。
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