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夏休み・死ぬほど暇な大学生向け小説リスト

旅のラゴス
旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

 

北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

筒井康隆『旅のラゴス』|新潮社

いきなり知らんおっさんに「人生は旅だよ」なんて言われても実感できないだろう。

でも、うまい小説にされると実感してしまう。どうしようもなく納得してしまう。

ひとりの男の人生を追いかけた小説であり、エピソードもバラエティに富んでいる。

『ワンピース』において「島」ごとにバラエティに富んだエピソードが用意されているように、ラゴスが訪れる街や世界ごとに話が展開していく。

様々な読み方ができる1冊。大学を出たあとの人生について、意識し始める時期にぜひ読みたい。

新世界より
新世界より(上) (講談社文庫)

新世界より(上) (講談社文庫)

 

  よくこんなにスケールの大きい和風SFを思いつくな!!という印象の1冊。

とにかく世界観の構築がうまい。アニメ版・漫画版もよく世界観を表現していると思うが、作中オリジナルの生物の造形などを想像する楽しみを味わうため、ぜひ原作から先に読んでほしい。

爽やかな濡れ場シーンも、エロを「餌」にSFを読ませてやるぞ!!という作者の気概が感じられてよい。まあ、貴志祐介の小説はだいたいどれもそうなんだけど。

なぜ夏休みの読書リストに入れたかというと、とにかく長い。ただ、うまい具合に「夏休みの冒険」「命がけのダンジョン探検」等々の展開に乗せながら、人類の謎、統治機構の謎、過去の謎を追っていくストーリーになっており、話がダレることはない。最後まで集中して読みきれた。

電車道

上2つは暇な大学生ならすでに読まれているかもしれないので、1冊は新しめのものを。

 

電車道

電車道

 

 「銀行勤めを辞して選挙に出るも夢破れ、偶然と権謀術数を駆使して電鉄のオーナー社長となった男の一族や、薬局仕事を逃れ家族を捨てた洞穴暮らしの後に私立学校を立ち上げる男の人生を通して、著者は「近代」が始まり最盛期を迎えるまでのこの国の百年を描こうとする」

電車道 磯崎憲一郎著 「近代の終わり」に脱線する者たち :日本経済新聞

小田急が舞台。

だが、『電車道』は、普段あまり歴史小説経済小説、鉄道小説の類を読まない人にこそ読んでほしい(自分も読まない側の人間)。

ここまでスピード感を持って日本の100年を描き切った小説はもう出ないのではないか。

とにかく文章から無駄を削る削る削る。権謀術数、重厚な人間ドラマが展開されるシーンでも、それは徹底されている。

文章に変な説教くささがなく、事実を記述していったような感じになっているぶん、人によって違うものを読み取ることができる、非常に良い構成になっていると思った。