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まったり司法試験・予備試験の基本書をレビューします

商法・会社法・手形法の基本書・演習書 レビュー

2017年3月更新。

会社法の基本書

※改正に対応したもののみ掲載。

 おすすめ

会社法 第19版 (法律学講座双書)

会社法 第19版 (法律学講座双書)

 

  最も有名な会社法の基本書。会社法の全範囲をカバーしている。必要最低限の内容を詰め込んだコンパクトな記述で非常に薄い。各条文の立法趣旨をきちんと書いてあるところが受験生にはうれしい。会社法は手続全体の流れを掴むまでが大変なので、いきなり厚い本を読むのはしんどい。まずは本書で全体像を掴んでから、江頭にステップアップしていくことになるだろう。

筆者は、論証作成には神田会社法判例百選、過去問や問題集での演習のお供(辞書)には下記の江頭会社法を使っていた。

 

株式会社法 第6版

株式会社法 第6版

 

 基本書というより、実務家向けに書かれた概説書。東大・京大など、多くの法学部・法科大学院の講義で使用されている。本書で調べ物ができるレベルまで達することで、会社法初心者を脱したといえるだろう(私が講義を受けた会社法の教授も「江頭を読めるようになるのが法科大学院生の到達点」とおっしゃっていた)。というのも、本書は「目次から検索できる事項は索引に載せない」主義になっているため、初心者には非常に「読みたいところ」を検索しにくいのである。○○という論点は、××の章に載っているだろうな…といったところまで頭に浮かぶくらい会社法を勉強した人でないと、使いこなすのは難しい。

記述スタイルとしても、本文では条文の知識だけを語り、膨大な註釈のなかで論点ごとに裁判例や学説、実務慣行について概説していくというスタイルをとるので、そこも初学者には使いにくいところだろう。

しかし、内容に関しては素晴らしいの一言であり、試験対策としても論文から短答式まで非常に使える。講義の予習・復習にも最適である。

多くの受験生がそうしているように、「辞書」として必ず本書を手元に置いておくべきである。本書を逐一参照しながら過去問や問題集を解いていくことで、試験対策上確実に身に着けなければいけない知識を拾っていくことができる。

 

最新株式会社法(第7版)

最新株式会社法(第7版)

 

 神田や江頭に比べるとシェアは落ちるが、神田や江頭よりこなれた文章で書いてある。その代わり、神田より厚い(560頁)。縦書の江頭は嫌だが、26年改正会社法に対応した基本書を使いたい、という方におすすめ。分量的に通読がしんどいと思うので、二冊目の基本書として購入する際は注意。

 

会社法 第3版 (LEGAL QUEST)

会社法 第3版 (LEGAL QUEST)

 

 最新の会社法改正に対応した。東大京大系の若手学者執筆の教科書。貸借対照表や登記の見本が載っているので、司法試験対策に有用。記述量としては神田より多く江頭より少ない、ちょうどよい感じである。初学者を強く意識し、平易な文体で書かれている。学説紹介は最低限に抑え、条文・判例・通説をていねいになぞっていく良書。

個人的には一番おすすめ。リークエ、神田、近藤のうち自分に合うほうをメインにして、江頭を辞書にするのがコスパが良い。

その他

会社法 (有斐閣ストゥディア)

会社法 (有斐閣ストゥディア)

 

 初学者向け。(このシリーズにありがちな点として)基本書っぽいタイトルだが入門書に近い。簡潔に記載してあるので講義の予習や全体の構造をつかむのにはよいと思うが、あえてこちらを選ばなくても神田で足りる感じはある。

 

会社法

会社法

 

 厚めの教科書といった感じ。江頭との差別点として、東京大学出版会らしく索引はそこそこ充実している。

講義で指定されない限りはリークエでよいと思われる。

商法総則・商行為法の基本書

商法総則・商行為法 第6版 (有斐閣法律学叢書)

商法総則・商行為法 第6版 (有斐閣法律学叢書)

 

商法総則・商行為法は、①予備試験の短答式(商法で出る。たまに民法としても出題)、②司法試験の短答式(たまに民法として出題)、③予備試験の論文式(商法で出るほか、特に総則は民法の前提知識として出る可能性が大きい)、④司法試験の論文式(商法ではまず出ない。民法では前提知識としてガンガン出る)に出題される。

もっとも、争いのない条文・判例レベルの知識しか必要とされないため、条文中心の記述である本書を読んでおけば十分。

ちなみに著者は上記『最新株式会社法』と同じ。

ところで、(基本書をレビューするという当ブログの方針からは外れるのだが)商行為法は予備試験の短答式以外での出題は99%ないと思われるため、筆者は、商行為法は判例六法を素読して済ませ、論文式での出題可能性が高い商法総則だけ『商法総則講義』(森本滋編)できっちり勉強するというスタイルを取った。

森本商法は、商法総則と商行為法(商行為法講義)が別になっているだけあって、近藤商法より記述が丁寧で詳しい。また、民法会社法との関係に配慮された記述がされているので、論文式対策には最適である。商法も論文式の実力養成を重視して基本書を選びたいという人には、森本商法が向いていると思われる。

また、商法総則・商行為法のマニア向けには『商取引法 第7版 (法律学講座双書)』(江頭)。これは江頭会社法とは逆に受験生は買ってはいけない本。実務家向けで、詳しすぎる。

なお、商法総則・商行為法の百選(商法(総則・商行為)判例百選 第5版 (別冊ジュリスト))は通読したが、民法会社法の学習の際にも役立った。

 

手形法・小切手法の基本書

基本講義 手形・小切手法 (ライブラリ法学基本講義)

基本講義 手形・小切手法 (ライブラリ法学基本講義)

 

図を多用し、二色刷り。至れり尽くせりの基本書。

手形法は予備試験・司法試験ともに出題可能性がないわけではない(予備試験で実際に出題されたことから今後も油断できない)ことから、基本書を読んでおいたほうが無難だと思い購入したが、読みやすい本であった。

この本以外を選ぶメリットはあまりないと思われる。

ちなみに、百選はもうすぐ改訂されるらしい。しかし、手形法の判例が急増することはないだろうから、現行の百選(手形小切手判例百選 (別冊ジュリスト (No.173)))を使用しておけば良いだろう。

 

会社法の演習書 

Law Practice 商法〔第2版〕

Law Practice 商法〔第2版〕

 

学者による商法・会社法・手形法の演習書。

これ1冊で商法全範囲をカバーしている。百選掲載判例をベースに作問されている。それゆえ、広い守備範囲のわりには薄い。「回しやすい」のが受験生にとってはうれしい演習書である。

内容も百選の解説を問題・解説形式にリライトしたような感じで、最高裁判所や下級審の裁判例を中心に丁寧な解説がされる。基本的に裁判例の知識では足りないところを学説で補っていくようなスタイルであり、受験戦略上は有用な解説である。

(おそらく受験生が百選を持っていることを前提に)判例の事案を省略するので、会社法判例百選 第2版 (別冊ジュリスト(205号))を横に置きながら読むとわかりやすかった。百選を参照しながら本書を読み進めていくだけで、自動的に百選をつぶすことができるため、効率は良かった。

2014年3月改訂と新しいので、改正後と改正前、両方の条文から解説がされている点も魅力である。というか、現時点でここまで改正前後の条文の対照を意識しながら書かれた網羅的な演習書は他にないと思われる。ぜひつぶしておきたい1冊。

 

 

 

 

 

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