おいでよ ほうりつがくのもり(基本書レビューblog)

まったり司法試験・予備試験の基本書をレビューします

『入門刑法学・総論』『入門刑法学・各論』(井田良) レビュー

基本書では講義刑法学・総論、体系書では刑法総論の理論構造、入門書では基礎から学ぶ刑事法 第5版 (有斐閣アルマ)、ジャンルがよくわからない刑法各論 第2版 (新・論点講義シリーズ 2)…をすでに書かれている井田良先生執筆の新たな入門書。

問題集、演習書を抜いてもこれだけ教科書的なものを執筆されているのに、また増えてしまった*1。井田ファンとしては読まねばならないと思い、法学教室連載時代から追いかけていた。

連載時のタイトルは「ゼロからスタート☆刑法"超"入門講義」。ポップすぎて敬遠した読者が相当数居ると思われる。

タイトルの通り、入門講義的な内容であった。細かく切り分けられた論点を拾っていくというより、刑法全体の体系を理解してほしい、というスタンスで書かれているのだろう。特に各論は独特。通常の教科書は構成要件や論点ごとに細かく分断して論じていくが、とにかく各論のおもしろいところを解説していったという感じになっている。文書偽造の章がお気に入り。「論証パターン」として試験に使えるわけではないが、「こっちでこうしたら、こっちで都合が悪くなる」「こっちでこう考える以上、こっちでこうしないと一貫しない」など、他の本にあまり書いていない各種試験での出題意図に気づくためのヒントが多数得られるので、論点の網羅性はないが試験にも役立つ*2

 

入門刑法学・総論 (法学教室ライブラリィ)

入門刑法学・総論 (法学教室ライブラリィ)

 

 

 

入門刑法学・各論 (法学教室ライブラリィ)

入門刑法学・各論 (法学教室ライブラリィ)

 

 

*1:最近始まった受験新報の謎の連載もそのうち単行本化されるのだろうか…受験新報に基礎法学的な内容の連載をしてしまえるのは井田先生だけだろう。

*2:ここが基礎から学ぶ刑事法 第5版 (有斐閣アルマ)より優れている点。もっとも、刑事法~のほうは刑事訴訟法までカバーしている。