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講義刑法学・総論 レビュー

 

講義刑法学・総論

講義刑法学・総論

 

 おすすめ度:★★★★☆

多少古い*1が、行為無価値(行為反価値)の立場から各種試験対策に対応できるレベルの記述をした教科書は、この本か『刑法総論』(高橋則夫)しかないだろう。自分も、最初はこの本から刑法学の学習をスタートした*2

井田先生ご自身は、消極的構成要件を認めるなど、独自の刑法体系をとられるが、この本では殆ど自説への言及はない。伝統的通説・判例・有力説を紹介するにとどめている。そもそも行為無価値基本書のメジャーどころである高橋先生や大谷先生もかなり独自の刑法体系をとられており、むしろ3者の中では独自色が薄い教科書に仕上がっている。まずはスタンダードな議論を抑えたい初学者におすすめ。

井田先生の体系を学びたい方は、『刑法総論の理論構造』あたりがオススメ。こちらも面白くて、学部生時代に徹夜で読んでしまった。

*1:実際のところ、出版年が古いことによるデメリットは(刑法においては)最新判例のフォローが遅れる程度しかない。そして、最新判例のフォローは判例集等ですることになるので、基本書レベルではあまり気にならない

*2:あのころは、2014年になっても『講義刑法学・各論』が出版されていない…などとは予想もしなかった。新刊はよ!