高橋則夫 刑法総論 刑法各論 レビュー
結論からいうと、
1.初学者が手を出せる本ではない
2.通説の解説は簡潔
3.判例の解説は手厚い
特に判例の解説が良い。基本書レベルでここまで判例の構造を解説してくれる本は他にない。判例の規範について具体的な考慮要素を例示しながら解説するスタイルなので、頭に入ってきやすかった。百選等の解説より試験向きでわかりやすく覚えやすい。
一方で、筆者独自の見解もバンバン登場する(しかも、筆者の刑法体系が相当に進歩的)から、決して初学者向きではない。このあたりは山口厚の刑法 第2版も同じような難点を抱えている気がするが、山口厚と違ってとても試験本番で使えるような説ではないので(褒め言葉)、一定の知識については基本刑法I─総論や入門刑法学・総論 (法学教室ライブラリィ)刑法総論の思考方法あたりで仕入れ、筆者の解説を読み飛ばせるくらいのレベルになってから各種試験対策のために判例通説の解説部分だけ読む本だと感じた。
というとダメな気がするが、判例解説部分は本当に素晴らしいので、読んで損はないと思われる。
こっちは正直普通なので他の基本書を持っていればあえて読む必要はないかもしれない。
ただ、高橋則夫が司法試験委員であるうちは、他の本より読む価値はあるだろう。