おいでよ ほうりつがくのもり(基本書レビューblog)

まったり司法試験・予備試験の基本書をレビューします

検察起案マニュアル

傾向と対策

検察科目の即日起案&2回試験は,以下のような設問構成で行われることが多いです。

  1. 公訴事実,罪名,科刑意見を書かせる問題
  2. 前記1の理由(思考過程)を書かせる問題
  3. 犯人性の間接事実の認定に使用した証拠(供述)の信用性を検討させる小問
  4. 手続知識の小問

前記1~3を白表紙の「終局処分」記載の形式に沿って書いていきます。形式を厳格に守らないと減点されるので注意しましょう。そこで,「終局処分」は末尾の記載例を含めて熟読する必要があります。

前記4も,白表紙の「検察演習問題」で予習すればまず満点がとれます。解答がついていませんので,修習生の間に出回っている「自主的に作成された」解説を入手しましょう。これだけは膨大なため当ブログでフォローできません。申し訳ありません…。白表紙自体には修習生でも本で調べたら独習できるみたいなことが書いてますが,基本書にはあまり書いていない「検察官としてどうするか」という実務的な知識を問う問題が相当数あり,解説なしでやるのは相当困難です。

以上のように,検察科目は,基本的にブログや先輩の話を聞いて情報を入れるより,単純に白表紙を熟読したほうが試験対策になる(&それで足りる)ので,以下では詳細な解説はしません。

起案上のテクニック

  • 思考過程を書かせる設問は「犯人性」「犯罪の成否等」「犯人性と犯罪の成否等の両方」のどれを書けばよいのか,まず確認する。ここを間違うと最悪死ぬ。
  • 送致罪名(記録の送致書に記載。警察の捜査段階での罪名)は迷ったら変えない。どうしても変えたい場合は「その他の犯罪の成否」で最低でもまるまる1頁以上は使って罪名を変えた理由を書く。というのも,送致罪名が正解の罪名だった場合に罪名を変えると断トツの低評価になり高確率で不合格を食らうが,送致罪名が正解の罪名ではなかった場合(違う罪名で起訴すべきだった場合)は難問であり,送致罪名のまま起訴する修習生が大量に出るため,それだけで不合格にはならないからである。
  • 講評の時間配分などから推測すると,配点が断トツで高いのは「犯人性の間接事実」。特に「物との結びつきを示す間接事実」は絶対に書く。試験戦略的には「物」に加えて「特徴の合致」「犯行機会」「犯行告白」あたりで4~5個程度書ければ十分A評価を狙えるので,細かい事実をあげるより間接事実以外の論点を厚く書いて確実に得点したほうがよい。

その他の科目

 

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刑事裁判起案マニュアル

傾向と対策

刑事裁判科目の即日起案&2回試験は,以下のような設問構成であることが多いです。

  • 小問(各設問2~3ページ指定×3~4問)
  • 事実認定問題(10~15ページ指定)

小問を落とすか,事実認定の枚数が極端に少ないと評価は厳しくなるので,小問を早めに処理して,事実認定に時間をかけることが重要です。

小問の対策

小問には大まかに次のパターンがあると思います。

  1. 証明予定事実記載書面・予定主張記載書面を検討させ,争点に関する間接事実の意味合い・重みを書かせる問題
  2. 公判前整理手続において,争点及び証拠の整理を意識した訴訟指揮の内容を書かせる問題
  3. 保釈・接見禁止等の請求を許可するか否か「手続上のあてはめ」を書かせる問題
  4. 純粋な知識問題

うち,4は事前の対策はほぼ不可能かつ配点も少ないので,予習段階での対策は捨てるのが賢明です。講義ノートを復習しておけば2回試験でも失敗はないでしょう。そもそも2回試験で講義でやってない知識問題が出たら誰も解けないので合否や成績に大きく影響しません。

前記1は各間接事実が積極か消極か,推認力の程度はどの程度かを書くだけなので,事実認定問題の知識で十分対処できます。

前記2は難問が多く,現場思考が要求されるため対策が立てづらい問題です。特に,検察官が主張する事実や請求する証拠の必要性を検討する問題が難問ですが,基本的には「検察官が主張する事実は要証事実に関して推認力が低い」パターン,「検察官が請求する証拠から証明しようとする事実は要証事実に関して推認力が低い」パターン,「その事実は他の証拠からでも証明できる」パターンが出題されやすいので,この3つの類型を意識して解くと処理しやすいと思います。高得点を取るコツは,要証事実を把握すること,間接事実の意味合いと重みを分析したらしっかり書くこと,「B・Pに~させる」という裁判官による強制ととられかねない表現は使わず「~という認識をB・Pと共有し,~を促す」という表現で書くこと,です(「させる」はNG!)。

前記3は,司法試験に合格した人なら,手持ちの刑事訴訟法の演習書の接見禁止・保釈部分を復習しておけば書けます。

事実認定問題の対策

事実認定問題はパターン処理で解けます。

  1. 結論を書く(事実認定問題は書いているうちに結論を変えたくなったりしますが,まずは適当に「認められる」「認められない」「一部認められる」といった結論だけ書いて改ページし,結論を変えたくなったら後で二重線を引いて訂正するのが安全です)。
  2. 個々の積極事実につき意味合いと重みを書く。記録の性質にもよるが,枚数指定の半分+1~2枚くらいは書いておくと安全。
  3. 各積極事実を総合評価する。総合評価して要証事実が認められなければここで終わり。総合評価して特段の事情がない限り要証事実が認められそうなら次に進む。
  4. 消極事実の意味合い・重みや,被告人の弁解以外の消極証拠の信用性の有無を書く。
  5. 被告人の弁解の信用性の有無を書く。
  6. 4と5の検討の結果から合理的な疑いをいれず要証事実が認定できる場合は,特段の事情がないので要証事実が認められる。合理的な疑いが生じた場合は,特段の事情があるので要証事実が認められない。
  7. 上記の検討で事実の認定に使った証拠の信用性の有無の理由と,被告人の弁解の信用性の有無の理由を書く。

証拠の信用性の議論をすべて答案の最後に持ってくるテクニックは,多くの教官が推奨するものです。私も,以下の理由からこのテクニックは有用であると思います。

  • 刑事裁判科目においては「事実の意味合い・重み」の記述の配点が高いので(起案の講評の配分から気づくと思います),信用性を厚く書いていくと時間・枚数不足で点を落とす可能性がある。
  • いったん最後まで「事実認定の理由」を書ききることができるので,起案中に時間切れになりそうになっても,末尾に白紙を数枚入れて紐で綴じたうえで起案を続けることができる(事実を認定する都度信用性を検討するスタイルではこれは不可能)。

他の科目

 

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【2回試験・即日起案】司法研修所起案マニュアル

 

 刑事系

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民事系

 

 

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この記事の趣旨とか

司法研修所の起案対策をマニュアル化したものです。

私自身は修習に入る前に起案の対策はしませんでしたが,任官や任検を目指す同期は,先輩から過去問や資料を入手して勉強会をしたり,出身法科大学院の実務教員や法科大学院と繋がりのある裁判官主催の勉強会に出たりしていました。

もちろん,任官任検においては,起案の成績がすべてではなく,司法試験の成績,年齢など様々な要素が絡んでくると思いますが,起案の成績は非常に重要な要素のひとつであることには間違いありません。また,司法試験の成績や年齢とは異なり,司法試験合格後修習開始前に対策することのできる要素です。

しかし,前記のような勉強会の機会のある修習生とない修習生では,起案の知識についても,修習開始前に大きな差が開いてしまいます。しかも,司法研修所の導入修習は,起案の作法について一切教えず,いきなり試験をするため,前記のような機会がなければ,任官任検レースで大きく出遅れてしまいます。ここで出遅れると,次の試験は実務修習中ということになり,配属班によっては数ヶ月以上後になるため,非常に不利です。

そこで,前記のような機会のない修習生がそのような不利を被らないよう,私のできる範囲で起案の技術をマニュアルという形で公表することにしました。内容には不正確なところもあると思いますが,適宜補ってもらえれば幸いです。

なお,この企画は,masoブロさんの記事を一部リスペクトしています。masoブロさんは司法試験・研修所起案関連のブログでは間違いなくトップのクオリティを誇るブログです。残念ながら現在は更新されていませんが,その方法論には普遍的なものがあります。この企画では,masoブロさんをリスペクトし,実用的な記述を心がけつつ,masoブロさん更新停止後に変化した傾向や起案ルールなども盛り込んでいく予定です。